もうひとつの月は、みなとみらい線の新高島駅の近くの高層ビルの建築現場だ。鹿島建設が推進するその建物の高層部分は、ほぼボリュームができあがり、現在はそのサイドに計画されている2〜3F建ての飲食モールが建築中である。その延長線上には、近い将来プラネタリウムとして開館される、大きなコンクリートの球体が姿を現しはじめている。遠くからみるとガスタンクのような趣だが、高速道路と高層ビルに囲まれた不思議なポジションにたつ不思議な存在は、歩く人に渡辺さんの月と同様に、束の間の安堵を与えてくれる。強い光を放つ発光体である太陽に比べて、月は世界中のだれもが接することができるやさしい存在だ。全てを受け入れる受動体としての柔らかい月の表情は都市には少なからず必要なものだ。
渡辺 篤/アイムヒア プロジェクト 展覧会 「同じ月を見た日」より




鹿島建設工事中のプラネタリウム外観
